ポスターセッション

 

ポスターセッション

6月18日(日)10:30~15:00 コアタイム12:25~13:25

会場 南九州大学都城キャンパス 3号館

 ポスターセッションは、学術研究発表会以外にも知見共有の場を設け、学術分野・実務分野の別に関係なく、造園学に関わる学生や専門家の立場を超えた幅広い交流を促すことを目的とするものです。本大会は対面のみの開催となります。

 

ポスター発表一覧

ポスター要旨は、大会参加申込者にお知らせするパスワードで解凍できる一覧が
下記からダウンロードできます。大会参加申込をされていない場合は解凍できません。

ポスターセッション発表要旨

 

(1)学術的研究・調査に関する報告

A 造園学原論および造園史

01: ベルギーにおける歴史的整形式庭園の特徴について

平岡直樹(南九州大学)

 ベルギーの整形式庭園は、17世紀初め頃から見られ、全体的に面積が小さく小規模である。明瞭な主軸線を持つものも多いが、城館の背後と庭園の先まで両面に亘って延伸するものは少数である。運河などの大規模な施設を持つ庭園はわずかである一方で、パルテールやトピアリ、並木など小規模な施設は数多く整備されている。

 
02: 京阪神の近代庭園における芝を活用した庭園の変遷について

竹田桃子・福井亘(京都府立大学大学院)

 近代における京阪神の住宅庭園を対象に,建造物の西欧化とともに庭園素材として導入がされてきた「芝」を中心に近代住宅庭園の系譜を整理し,まとめることを目的とした。その結果,明治後期には西洋式庭園の完成が見られたが,大正から昭和初期になると芝庭という洋風庭園要素に加え,飛石や枯池,灯篭といった日本庭園的要素の折衷の傾向がみられた。

 
03: 国指定名勝の松濤園における改修以前の庭園景観に関する研究

関西剛康(南九州大学大学院)

 立花家史料館が所有する1枚の古写真が、初期の松濤園を撮影したものであることを、撮影されている石灯籠や景石等と現在の松濤園のそれらとの比較から立証するための研究を行った。その結果、同一内容であることが判明した。その古写真を基に、最新の古文献研究との比較検証を行い、より具体的な庭園様相を解明した。

 
04: 戦後の国際交流からみたオーストラリアの日本庭園の特徴

牧田直子(南九州大学)

 海外の日本庭園は戦後の80年間で様々なものがつくられている。本研究ではオーストラリアの日本庭園の造営の経緯、空間特性、利活用の変遷について、日本の国際交流の変遷と照らし合わせた。その結果、日本庭園の様相が変化したことは、国際交流の内容や携帯などその変化の影響があったことがわかった。

 

B 造園材料・施工および管理

05: 宮崎県綾町ナチュラルガーデンの評価とガーデンボランティアの特性について

幸松都・牧田直子(南九州大学)

 宮崎県綾町ナチュラルガーデンの町民の評価と錦原ガーデンの管理活動に参加しているボランティアを対象に、管理活動に至った経緯、人物像、活動を通しての人との繋がりの内容や変化について明らかにした。

 
06: 宮崎県日向景修園の樹木調査について

篠﨑圭太郎・日髙英二・松島大樹(南九州大学)

 日向景修園は、完成から約40年が経過する日本庭園である。特徴として、敷地が干拓地を埋め立てられた点と植栽樹木の多くを道路工事等で撤去が必要な樹木を移植し活用した点が挙げられる。現存する当時の工事図面や管理記録などの資料が少ない為、本報では現況の庭園内樹木樹勢調査について報告する。

 
07: 日本庭園における日本列島特有の火山岩文化の全体像

張平星(東京農業大学)

 日本列島は、深成岩や堆積岩の多い大陸と異なり、様々な火山岩が存在する。石材の特徴を活かして作られた日本庭園には、日本列島特有の火山岩文化の存在が予想される。本発表は、造園学・地質学・民俗学など幅広い分野の文献から造園石材の中の火山岩情報を整理し、火山岩の多い地域の庭園に現地調査を実施し、日本庭園の石材文化の把握を試みる。

 
08: 福岡市の公開空地における植栽デザインと平面計画に関する基礎的研究

篠原莉子・朝廣和夫(九州大学大学院)

 福岡市の公開空地に植栽されたクスノキとケヤキを対象とした樹高や平面配置等の調査により、対象地における植栽デザインの特徴を分析した。結果として、クスノキはシンボル性を持ち自然樹形を形成し、ケヤキは街路樹的役割を持ち枝張が整形されている傾向がみられたが、樹種特性に不相応な狭い空間に植栽され強剪定されたものも多く、平面計画や樹種選択の見直しが必要であると考えられる。

 

C 造園計画(庭園計画、公園計画、風景計画)

09: 兵庫県立明石公園における樹木伐採と石垣保全に関する意識調査

嶽山洋志・松本夕芽(兵庫県立大学大学院/淡路景観園芸学校)

 兵庫県は明石城跡の石垣保全と景観向上を目的に、県立明石公園の樹木を2018年から21年にかけて合計1,687本を伐採した。それに対して市民などから、過度な樹木伐採に対する批判が高まり、兵庫県は伐採を中断した。本ポスターでは、このような状況下における公園利用者の景観評価や樹木管理意識などの調査結果について報告する。

 
10: 河川を活かした公園緑地が有するグリーンインフラとしての機能に関する研究

松本浩・金甫炫(国土交通省国土技術政策総合研究所)

 本研究は、河川や河川に隣接して設置された公園緑地が有する機能について、WEBや文献等による事例調査を行い、グリーンインフラや流域治水の観点から各事例が発揮している主な機能を整理した。着目した観点は、防災・減災、人々の活動、自然環境、景観等であり、これらに関連する雨水貯留、運動、生物の生育・生息等の機能を把握した。

 

11: 福岡県久留米市ブリヂストン通りの街路植栽の生態系サービス評価の試み

小宅由似(香川大学)・吉岡威・野上一志・當内匡・
宇田川健太郎・本山圭一郎・安田卓宏(街路樹診断協会)

 ブリヂストン通り(福岡県久留米市)の街路沿いに植栽されているケヤキ156本のサイズならびに活力度を記録し、i-Tree Eco(V6) ならびに互換性を有する樹木構造解析システムを用いて大気環境改善機能の貨幣価値評価を試みた。対象木の平均胸高直径は55.6±12.2cmで、大気環境改善機能の合計評価額は864,019円と評価された。剪定強度の異なる2街路間での平均胸高直径に有意な差はみられなかったが、1本あたりの評価額には有意差がみられ、剪定強度による生態系サービスへの影響が示唆された。

 

12: 高経年集合住宅団地の屋外空間における自然発生的な植物栽培に対する居住者の認識

丸森さおり・柳井重人(千葉大学大学院)

 高経年集合住宅団地では、少子高齢化が進み、高齢者の社会的孤立の解消が課題である。こうした中、その屋外空間では居住者による自然発生的な植物栽培が散見され、それがコミュニティ形成に寄与する可能性がある。そこで、本研究では、インタビュー等を通じて居住者の認識を把握し、その可能性を検討した。

 

13: 観光洞に繁茂する照明植生に対する観光客の印象評価

安藤奏音(中央大学)

 観光洞で繁茂する照明植生は原生的な生態系を改変するため、予防・除去が推進されている。しかし、観光客が照明植生に抱く印象は不明であり、管理計画に検討の余地が残されている。そこで本研究は、秋芳洞、龍泉洞、日原鍾乳洞で観光客を対象に調査を実施した。その結果、観光客は照明植生に好意的であることが示された。

 
14: 都市公園における農的活動の場の整備・運営に関する取組みの実態と課題
  ―横浜市の農園付き公園を対象として―

許国麟・柳井重人(千葉大学大学院)

 近年、都市住民の農とのふれあいのニーズの高まりがみられる中、都市公園にも農的活動の場としての役割が期待されている。本研究では、横浜市の農園付き公園を対象に、文献資料調査や管理者への聞き取り調査を通じ、農的活動を取り入れるための取組の特徴、効果や課題を明らかにし、今後のあり方を考察した。

 
15: 特別史跡水城跡における整備事業と景観変化に対する住民意識

薬師寺菜加・朝廣和夫(九州大学)

 特別史跡水城跡を対象に整備実施による緑地変化と整備・景観に関する人々の認識を調査し、今後の整備方針に寄与する知見を得ることを目的とした。結果、緑地状況は整備前についてスダジイ、クスノキ等の照葉樹が優占上位であり、整備前後では樹木の胸高断面積に変化がある一方、優先順位にあまり変化が見られなかった。アンケート調査では情報発信や行政連携、市民活動へ若年層の参入が強く望まれていることが分かった。

 
16: 登町・やなぎだ植物公園のマスタープラン策定と利活用の検討

片桐由希子(金沢工業大学)・豊島祐樹(石川工業高等専門学校)

 旧柳田村(現石川県能登町)が1986年に開設したやなぎだ植物公園は、観光資源としてのポテンシャルを有すると同時に、ファシリティ・マネジメントの観点からの見直しが求められている。プロジェクトでは、将来ビジョンの共有に向けたマスタープランとともに、施設の減築や植栽計画などの短期的整備への提案を検討し、地域における公園活用の手法と可能性を議論した。

 
17: 地域住民が感じる街路樹の価値認識に関する基礎的研究

古旗泰岳(株式会社日比谷アメニス)・入江彰昭(東京農業大学)・
濱泰一(東京大学空間情報科学研究センター)・茂木もも子・町田怜子(東京農業大学)

 街路樹は緑陰、景観、防災など多様な効果を有しているが、植栽環境の悪化やその倒木の危険性の課題をもっている。住民が街路樹の効果をどのように認識しているのかを調査し、住民の街路樹の価値認識を明らかにした。本研究では、居住年数・居住タイプ・街路樹のある道路からの居住場所の距離によって価値認識に違いがあることがわかった。

 

D 都市および地方計画

18: 東京都23区の樹冠被覆の変化とその要因

白石欣也・寺田徹(東京大学大学院)

 東京都23区を対象とし、9年間(2013年-2022年)の樹冠被覆の増減をリモートセンシング分析によって解明した。2013年と2022年の衛星画像から、樹木と芝・草地を分類し、樹冠被覆のみを抽出した。それらを比較し、樹冠被覆の増減を解析し、マッピングした。その分析結果と土地利用データをGIS(地理情報システム)で空間解析し、樹冠被覆の増減の要因を明らかにする。

 
19: Spatiotemporal dynamic correlation of LULC in Kinki metropolitan, Japan

YUSONG XIE・WEN WANG・SHOZO SHIBATA(京都大学)

Land use change is seen as a critical factor impacting urban ecosystem service functions, which can better represent the characteristics of human activities and urban development needs. With the development of remote sensing technology in recent decades, remote sensing-based research to analyze land use/cover changes, then in environmental protection, urban ecosystem service evaluation, urban planning, and other sectors have become common. It is vital to research and estimates future land usage in the face of complex climate change and the amplification of the phenomena of uneven regional economic development. We can intervene in urban development patterns ahead of time based on the simulation results while taking actual development needs into account.

 

20:農地境界と農の風景の連続性に関する基礎的研究
  - 東京都練馬区高松一・二・三丁目農の風景育成地区を対象として-

田中麻美子・根本哲夫(奈良女子大学大学院)

 本研究は、周辺緑地との一体的な農業景観の醸成を目指す東京都の「農の風景育成地区」において、農地境界の有り様(境界線を規定する構造物の有無や種別)が農の風景の連続性に与える影響を検討する基礎的研究である。限られた農の資源の中で、都市農業を生かしたまちづくりを行うための定性的基礎データとして活用することを目指す。

 
21: グリーンインフラの総合的な機能評価手法に関する研究

金甫炫・松本浩(国土交通省国土技術政策総合研究所)・大石 智弘(内閣府沖縄総合事務局)

 本研究は、グリーンインフラの総合的な機能評価手法を検討するために、グリーンインフラに関連する国内外の総合評価手法の事例調査を行った。総合評価手法は、大きく貨幣価値化、点数化、マップの階層化の三つに分類して、その特徴とグリーンインフラの評価に適した手法について検討を行った。

 
22: 工芸作家の移住プロセスと創作空間 ~滋賀高島における16ジャンル22アトリエの事例研究~

轟慎一・細部日和(滋賀県立大学)

 高島市には中山間部・平野部の集落・市街地など様々なエリアに、移住した工芸作家(陶芸家・ガラス作家・染織家・木工作家など)のアトリエがみられる。各作家の移住プロセスや建築行為、創作空間構成を把握するとともに、職種ごとの作業工程にかかる要素や、生活空間との関係等の分析を通じ、創作環境の課題を考察した。

 
23: 「長崎新地中華街」の成立とその影響について

末廣拓登・伊藤弘(筑波大学)

 本研究では「長崎新地中華街」が、長崎華僑の動向及び長崎市の都市観光政策の中でどのように成立し、周辺に拡大していったのか、文献及び地図資料よりその要因を明らかにする。「長崎新地中華街」の成立がハード整備及びイベント開催を促進し、長崎市全体で中国文化を表出するという影響を与えたことが考えられる。

 
24: Identifying Green Gentrification in 18 Lower-tier Cities in China

LIU Mengqi・TERADA Toru(東京大学大学院)

Following the implementation of green policies that prioritize the establishment of green amenities, this study aims to examine the emergence of green gentrification in 18 lower-tier cities in China. This research analyzes the land cover and housing price change in the Area of Interest (parks and public green spaces) in 2017 and 2022. This approach will help to identify the environmental gentrification process in the study area and provide insights into the socioeconomic implications of China’s urban greening policies.

 
25: 地方都市近郊における新規住宅地の開発手法と居住形態選択
  ~近江八幡市の市街化調整区域の地区計画と開発許可~

 森河京子・轟慎一(滋賀県立大学)

 近江八幡市の調整区域では地区計画制度を用い既存集落に隣接して20戸程度の新規住宅地が供給されることが多いが、居住意識や集落維持等からみた開発手法の妥当性が検討されていない。地図分析・ヒアリング調査等を行い、各エリアの特性や立地形態・生活圏域等をふまえ、適正な開発手法と地方都市近郊のこれからを考察する。

 
26: 関東地方における地域共生型ソーラーシェアリング

 別所あかね・岡澤由季・林徹・Jack Lichten(東京大学大学院)

 ソーラーシェアリング(SS)は営農空間の上部で太陽光発電を行う新技術である。本研究は特に導入が進む関東地方を対象に、各自治体への電話調査から地区単位の導入実績データを収集しGIS分析を行った。さらに導入が集積している地域の自治体・農家・近隣住民への現地調査から地域共生型SSのあり方を明らかにする。

 
27: 映像作品が地域ステークホルダーの感性的自然認識を促す可能性
   ~ アニメ『夏目友人帳』と熊本県人吉球磨地域を事例として

WU Shuyue(東京大学大学院)・劉銘(國學院大学)・中村和彦(東京大学大学院)

 持続的な地域活性化の阻害要因の一つとして、自然との共生に向けた感性的認識が不足していると考えられ、映像作品がそれに寄与する可能性がある。本研究ではヒアリング調査から、人吉球磨を舞台としたアニメ『夏目友人帳』が、地域活性化に関わる諸団体の関係者が持つ感性的な自然認識に与える影響について検討する。

 
28: コンテンツツーリズムにおけるキャンプ場の利用ニーズに関する分析
  -『ゆるキャン△』と聖地巡礼を事例に-

小田龍聖(森林総合研究所)

 人口減少社会では、都市からの関係人口創出が地方の地域振興や自然資源マネジメントのために必要とされる。コンテンツツーリズムは可能性の一つであり、林野庁が国有林キャンプ場の利用推進のために『ゆるキャン△』を活用した事例などがある。本報告ではTwitterの「ゆるキャン」および「聖地」を含む投稿を収集し、SNSを通した利用状況について分析した。

 
29: 博多港と北九州港港湾緑地における植生樹種の傾向と生育活力度評価に関する一考察

吉野真生子・朝廣和夫(九州大学大学院)

 臨海部の厳しい自然条件下に植栽された植生樹種の傾向と生育状況を把握するため、博多港6ヶ所と北九州港3ヶ所の港湾緑地を対象に、文献調査による各港湾緑地の植生樹種の全体常在度の把握、現地調査による樹木の生育活力度評価を行った。植生樹種や生育状況の傾向は、各港湾緑地の利用形態や整備方針と関係性が少なくともあると考察した。

 
30: グリーンインフラの社会実装向けた課題に関する調査研究

上野裕介(石川県立大学)・金甫炫(国土交通省国土技術政策総合研究所)・
長谷川啓一(EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株))・西村亮彦(国士館大学)

 本研究は、自然環境がもつ多様な機能を活用する考え方として注目されているグリーンインフラの社会実装に向けた課題や取組状況を把握することを目的とし、グリーンインフラ官民連携プラットフォーム会員84名を対象に令和3年にアンケート調査を行った。

 
31: 仙台市青葉通における街路樹・建物更新前後の街路景観の印象評価

秋田莞助・寺田徹(東京大学新領域創成科学研究科)

 ケヤキ並木が有名な仙台市青葉通では、近年、地下鉄延伸に伴う街路樹の植え替えや、建物更新に伴う公開空地の創出など、街路景観に変化がみられる。今後も老齢化したケヤキの植え替えや一層の再開発が起こり得る。本研究では、青葉通における街路樹・建物の更新による街路景観の印象変化について、シミュレーション画像を用いて評価した。

 
32: HMDを用いた樹木間隔の違いによる街路樹景観の印象変化

川口将武(大阪産業大学)・横井彩実(株式会社テクノ菱和)

 近年、街路樹の適正な育成管理に向けた計画を策定する自治体が増加する中、次世代に引き継ぐ方策として、地域や路線の状況に適合した街路樹更新を行うことで将来の景観向上と管理費負担をバランスさせる検討が行われている。本研究は、仮想歩行体験システムによるVR評価実験より現状の標準的な樹木間隔から密度の適正化の方向性を探る。

 
33: 家庭内での自然体験の伝承の実行に関する規定因の検証

吉冨瑠夏(茨城大学大学院)・高瀬唯(茨城大学)

 日常生活での自然体験の減少につながる「経験の消失」が問題視されている。その解消方法として、自然体験の伝承が挙げられる。本研究では、家庭内での自然体験の伝承の実行に関する規定因を明らかにすることにした。子どもがいる人を対象にオンラインアンケートを実施し(n=2,718),その結果について,共分散構造分析を行った。

 
34: 江戸川区の街路樹の生態系サービスとその貨幣価値の推定

利田昌信・安藤奏音・ホーテスシュテファン(中央大学大学院)

 都市の緑化を推進する動きがある一方で、落ち葉清掃の煩わしさ等から強剪定を求める人々もいる。持続可能なまちづくりのために街路樹に対する合意形成が必要である。本研究ではその指標の一つとして街路樹の生態系サービスとその貨幣価値をi-Tree Ecoを用いて算出した。東京都江戸川区を対象に解析を行なった結果、年間約25,000,000円以上と推定された。

 
35: 平成29年九州北部豪雨災害の被災農村における農地利用の変遷と被災状況に関する調査
  ー杷木志波地区平榎集落を対象としてー

志水健一郎・朝廣和夫(九州大学大学院)

 平成29年九州北部豪雨災害で被災した朝倉市杷木志波地区平榎集落は柿の生産が盛んな中山間地域の農村である。災害後の農地の復興や集落における営農状況を明らかにするために、航空画像とGISを用いて対象地の農地利用の変遷と中山間地域等直接支払制度の利用について整理し、それらの農地の被災状況や営農の実態を調査する。

 
36: 都市オープンスペースでの「体験可能性」を評価する

宍戸翔・寺田徹(東京大学大学院)

 都市オープンスペースの人にとってのサービスを評価するために、センのケイパビリティ・アプローチを参照した「体験可能性」概念(各種の体験が実質的に選択可能か)を提案し、それに基づく具体的な評価指標を作成した。そして、東京都町田市の2地域および7つの個別スペースにおいて評価を行った。これにより、アクティブユーザーに限らない住民を含めた、また地域スケールと個別施設スケールで共通したオープンスペース評価が可能になった。

 
 

E ランドスケープ・エコロジー

38: 国天然記念物踊場湿原におけるオオハンゴンソウ群落への掘り取り処理の影響とその後の経過について

大窪久美子(信州大学)

 国天然記念物に指定されている踊場湿原では10年以上前から特定外来生物のオオハンゴンソウが侵入、定着してきた。地下部を含めた掘り取り処理を集中的に実施した結果、本種の優占度は著しく減少し、駆除効果が確認された。本研究では処理に伴う群落の組成および構造の変化と、その後の経過についても報告する。

 
39: 地域性種苗供給のための緑化植物3種の遺伝的地域性

渡邊敬太・屋袮下亮(大成建設株式会社技術センター)・津村義彦(筑波大学)

 緑化対象地域の遺伝子を持つ「地域性種苗」を適切に供給・使用するためには、対象種の遺伝構造についての基礎情報が不可欠である。ここでは、核DNAと葉緑体DNAを用いて、ヤブラン、ケヤマハンノキ、ノリウツギ の遺伝的な地域差を調査し、各種について検討した種子と種苗の移動エリア(2〜3エリア)を報告する。

 
40: 大阪市中之島における鳥類分布のモニタリング調査の計画と途中経過報告

髙林裕・福井亘(京都府立大学大学院)

 都市の鳥類相は,時代が進むにつれて少しずつ変化している。都心部において,今後も鳥類相の変化がみられるのかを把握するため,大阪市都心部に位置する中之島において,通年での鳥類分布のモニタリング調査を2023年3月より月2回の頻度にて実施している。本発表では,調査の概要と発表時点での鳥類調査の結果について報告する。

 
41: The Positioning of Scenic and Historic Areas in China’s Heritage Protection System: After the establishment of the National Park System

WANG YI・黒田乃生(筑波大学)

In 2013, the Chinese government first proposed establishing the national park system. Prior to this, national scenic and historic areas in China corresponded to national parks internationally. This study clarifies the positioning of scenic and historic areas in the heritage protection system in China by studying the public documents over the past 40 years and examining the policy changes. Furthermore, this study proposes the new value and positioning of scenic and historic areas in China.

 
42: 有毒植物に関する知識に影響を与える要因の分析

木村圭一・浅野晴香(東京大学大学院)

 近年、自然体験の機会喪失に伴う、野草の知識の消失が問題視される。特に有毒植物に対する知識の消失は 中毒等の危険性を増 させるのみならず、それを回避・利用するべ食大く培われてきた地域の伝統や文化の喪失にもつながる。本研究は有毒植物に対する知識保有状況を調査し、知識の入手先や保有度に影響する要因を分析した。

 
43: 首都圏の屋上緑化地における繁殖期の鳥類相 ―緑化地の環境特徴と周辺地域の影響―

瀬岡夏希・安藤奏音・ホーテスシュテファン(中央大学大学院)

 都市域の鳥類多様性保全に配慮した屋上緑化地の配置計画論に貢献するために、首都圏の屋上緑化地で鳥類の分布規定要因等を調査した。その結果、鳥類多様性には屋上緑化地内の草本や樹木被覆地、周辺の水辺被覆地が正の影響を与えていることが分かった。一方、屋上緑化地の高さによる大きな影響は見られなかった。

 
44: バッタ目の鳴き声によって形成されるサウンドスケープの特徴

徳江義宏(日本工営株式会社)・関研一(千葉工業大学)・西廣淳(国立環境研究所)

 バッタ目の鳴き声は生態系サービスであり、身近に鳴き声が聞こえる空間づくりが期待される。本研究は宇都宮市内においてバッタ目によって形成されるサウンドスケープの特徴を把握することを目的とした。秋季にバッタ目の生息分布調査と野外録音を行った。現地調査結果からバッタ目の鳴き声と音源から算出したサウンドスケープの各種指標の関係性を分析した。

 
45: 空き地におけるアーバンワイルドスケープの許容と評価に関する 研究

SUDAER・木下剛・李虹俣・陈杰・羅施賢・謝静・汪慧心(千葉大学)

 国際的に注目されているアーバンワイルドスケープは、経済的コストが低い、生物多様性を向上、住民の福祉など多く利点がある。しかし、アーバンワイルドスケープは必ずしも 大衆に積極的に受け入れられるとは限らない。本研究は、空き地に着目し、土地の植生がどのようであれば、人々に受容してもらえるのかを研究した。

 
46: 万博記念公園周辺地域の環境と鳥類分布との関係について

原田和佳奈・福井亘・高林裕・植地俊輔・布井雅弘(京都府立大学大学院)

 万博記念公園(以下,万博公園)とその周辺地域との連結性をみるため,万博公園周辺地域において鳥類調査を行った。その結果,万博公園からの距離と鳥類分布との有意な相関はほとんど見られず,万博公園から離れた地点においても樹林性鳥類が確認されたことから,万博公園に生息する鳥類が周辺地域も広く利用している可能性が考えられた。

 
47: リター堆積の有無によるシイ・カシ類が形成する外生菌根の量的・質的差異

佐原怜一郎・葛西弘・澤畠拓夫(近畿大学農学部)

 アラカシ,スダジイ植栽地におけるリターの堆積の有無が根端数,外生菌根の機能群別形成数および形成率に与える影響を調査した。その結果,両樹種において、リター除去区では、堆積区よりも根端数および菌根形成率が少なくなっており、接触型の菌根が欠落して短距離型の菌根のみが優占した状態となっていた。

 
48: SD法を用いた放牧動物の印象評価

立松風太・菅原舞依・森元真理(東京農業大学)

 本研究では、風景に動物が加わった際の印象を明らかにするために、放牧風景に注目し、その一助として、4種の放牧動物の外貌に対する印象構造をそれぞれ把握した。その結果、ウシ、ヒツジ、ウマ、ヤギの印象は大きく異なり、風景の一構成要素として動物種の変化は、風景に対する印象に影響を与える可能性が示唆された。

 

F 情報処理・知覚

49: 日本文化に基づくゲームシーンの道路景観に対する定量指標と主観評価の関連性について

梅笑寒・國井洋一(東京農業大学大学院)

 ゲーム産業が日々発展している現在、各種類のゲームには多くの日本文化要素がある。また、空間情報技術を利用してゲームシーンを研究する文献は少ない。ゲームシーンにおける道路景観はゲームの中で重要な役割を果たしている。本研究では「Ghost of Tsushima」を例にとして日本文化を基づくゲームシーン道路景観に対する定量指標と主観評価の関連性を把握する。

 
50: 海の中道海浜公園でのUAVを用いたマツ材線虫病被害木の探索について

大隣昭作(福岡大学)・金澤弓子(東京農業大学)・手嶋千羽(株式会社九州緑化産業)

 UAVで得られたデータを高精度に一致させたオルソ画像、数値表層モデル(DSM)、植生指標などを複合的に、経時変化を含めて解析することで、被害木の探索精度を向上させ、実際の対策工事に活用できる手法を明らかにすることを目的とする。

 
51: 点群を用いた精密3次元測量における造園空間への応用可能性に関する研究

菅井一樹・国井洋一(東京農業大学大学院)

 地上型レーザスキャナ(TLS)及びドローン(UAV)により、イタリア大使館日本庭園と水戸市七ツ洞公園を実測し、3次元点群データを取得した。精度5mmの点群データにより構築する詳細3D空間モデルでは、現況平面図・DEM・等高線の構築が可能で、毎木調査・景観シミュレーション、公園管理・広報活用など、空間情報を用いる用途に応用可能性がある。

 
52: VR技術を用いたランドスケープデザインレンダリング効率の評価手法に関する研究

陸雨浩・福岡孝則(東京農業大学大学院)

 VR技術は急速に発展している現代、PCやソフトウェアの性能限界により、生態系オブジェクトは3Dレンダリングソフトウェアでダイナミックに表現することができません。現在普及しているレンダリングソフトウェアで実空間の景観を再現する場合、SD法とヒートマップを用い、どのレンダリング精度が品質と効率の面で最も優れているのかをVR空間のレンダリング精度を複数の段階に分けて調査しました。

 
53: コーヒーショップにおける緑化が利用者の印象に与える影響 
ーサードプレイスとしての観点からみた評価ー

岩崎寛・磯貝彩帆(千葉大学)

 サードプレイスをコンセプトに掲げているコーヒーショップチェーンの異なる緑化形態の店舗を対象とし、利用時の印象比較を行った。その結果、コーヒーショップにおける緑化は店舗の印象を良くするだけでなく、利用者の快適性を高める可能性があり、サードプレイスとして評価できることがわかった。

 
54: 森林内音楽演奏とそのインターネットライブ配信の試行

中村和彦(東京大学大学院)

 本研究は、森林内音楽演奏が現地聴取者およびインターネット遠隔聴取者の森林音への関心に及ぼす影響を検討する。東京大学富士癒しの森研究所の森林内で2022年7月に早朝6時から1時間程度、NHK交響楽団所属奏者による弦楽三重奏を実施し、現地聴取者4名と遠隔聴取者4名を対象として聞き取り調査を行った。

 

(2)技術に関する実践報告や評価・論考

55: コロナ禍における園庭緑化支援活動のファシリテーターとしての役割についての一考察

仙田考(田園調布学園大学大学院)・清水英二(子どもの森づくり推進ネットワーク)・
石田亜由美(三茶こだま保育園)・ 野秋和弘(エンゼル幼稚園)・上之悟史(こども園ほしのこ)

 コロナ禍に実践した、NPO法人子どもの森づくり推進ネットワーク主催による、全国乳幼児施設3園での、子どもたちがより自然に触れることのできる場・環境づくりのための園庭緑化支援モデル事業「園庭緑化運動」における、園庭環境専門家のファシリテーターとしての役割について、活動報告をとともに検討を行う。

 
56: 山之口スマートICから宮崎ICまでの高速道路から見える皆伐地点の景観を中心に

岡島直方(南九州大学)・土居季樹

 宮崎県山之口スマートICから宮崎ICまでを高速道路で走行した場合に見える皆伐地点の中から、特徴的な景観を数か所取り上げて、その景観の特徴を記し、そのような景観として見えているのはいかなる理由によるか調査する。対象区域の近辺のエリアで皆伐が行われる場合の条件についても調べる。

 
57: 和紙製造プロセス理解におけるすごろく活用の可能性に関する研究

石見遼・菊池裕太・直木日向子・平塚万都里(立教大学)・西川亮

 埼玉県小川町の細川紙はユネスコ無形文化遺産に登録されていながら、原料である楮から和紙に至る製造プロセスは知られていない。これを踏まえ、ゲーム形式で成長過程を辿る「こうぞすごろく〜こうぞの一生〜」を開発した。本ツールを利用し、主に小学生の児童に和紙づくりの課題や楮について知識量の変化があるか検証する。

 
58: なぜガーデニングワークショップに参加するか

林典生(南九州大学)

 2022年10~12月に南九州大学都城キャンパス及び都城市・三股町にて計10回、花等の寄せ植え作成等を主としたガーデニングワークショップを実施し、参加者にアンケート調査を実施した。得られたデータを基にして性別・年齢等を集計するとともに、なぜガーデニングワークショップに参加するかを明らかにするために分析を試みた。

 
59: 江夏整形外科デイサービスセンター・リハビリテーションガーデン 
  -利用者の機能向上を考慮した計画設計-

代仁成・森岡欣信・関西剛康・岡島直方(南九州大学)

 宮崎県北諸県郡三股町に位置する江夏整形外科デイサービスセンターのリハビリテーションガーデンの整備に関して、利用者の要望や理学療法士、看護師からの意見を調査研究した。それらを反映して、五感を通じた感性力や生活能力の向上に繋げることを目的とした計画設計を実施した。

 
60: 都市公園における単独利用者の利活用実態と滞在場所の選好傾向に関する研究

廣田峻也・福岡孝則(東京農業大学大学院)

 本研究は、近年の屋外利活用が広がる屋外公共空間において、新たな生活の場としての公園空間を研究対象とする。新宿中央公園と日比谷公園を対象に、利用者の利用実態を測る調査を実施した。利用者を「単独利用者」と「複数人利用者」に分け、マッピングを行い、滞留行動や場所の選択を、利用形態の違いから分析、研究する。

 
61: 都立大井ふ頭中央海浜公園なぎさの森における干潟環境の保全と自然体験での活用の取組み

三枝敏郎・倉井真里・倉石篤(株式会社日比谷アメニス)

 臨海部の公園において市民参加型の定期的な清掃活動により干潟環境の保全を行っており、団体や学校利用の受入れも行いつつ、一般の利用者にも身近な自然に対し関心を持ってもらう取組みを実施している。指定管理者として利用機会の均等化を図りつつ、保全と利用の両立を可能にする利用調整などの管理運営について報告する。

 
62: ナラ枯れ発生前後の生田緑地における二次的な自然の取り扱いの変化

水本彩月・平本翔大・内田一生・稲田萌愛・田中優美子・
チョウ ジュンイン・西垣維音・倉本宣(明治大学農学部)

 生田緑地は多摩丘陵の東部の大規模で重要な自然を有する緑地である。「保全」と利用の好循環を謳う生田緑地憲章に基づいて、コナラが優占する雑木林は放置されて大径木化が進んだ。そこにナラ枯れが2017年から発生した。2022年度現在、ナラ枯れ樹木は約1900本あり、川崎市が約300本伐採したほか自然会議市民部会が人力で伐採した。 

 
63: 四国初の雨庭(レインガーデン)造成の取り組み

中原康成(香川大学大学院)・小宅由似(香川大学)・阿野晃秀(京都先端科学大学)・
張林瀛(南京工業大学)岡崎慎一郎・末永慶寛(香川大学)

 2023 年 3 月に,香川大学創造工学部キャンパス(香川県高松市)内に四国初となる雨庭の造 成を行った。本事例では造成に先んじて造園資材の物理性の検証を行い土壌構造を決定し, 雨水の一時貯留のため窪地および築山を整備した。また教育の場としての活用に向けて,建 築廃材の再利用,在来種を中心とした植栽を実施した。

 
64: 造園技能検定試験への取り組みと課題について

松島大樹・篠﨑圭太郎・岡島直方(南九州大学)

 環境園芸学部附属フィールド教育センターでは、造園におけるキャリア形成の一環として「造園技能士」の資格取得を支援している。本報では、本学における支援事例と受検する学生の性別や高校時の専攻別との関連性について報告するとともに、資格取得後の技能向上を目指した実践的取り組みを報告する。


65: グリーンインフラに関する認識と議論の場の構築

伊藤渚生(MS&ADインターリスク総研(株))

 近年では、グリーンインフラの考え方を用いて社会資本の整備や土地利用を検討し始めている。一方で、機能に関する認識は人によって違いがあり相互認識を持てないケースがあると考えられる。このような背景から、誰でも投稿できるアプリの構築を行い、グリーンインフラの相互理解を促す場を構築した。

 
66: 国営公園における新技術活用可能性検討

則竹登志恵・黒岩剛史・浜出智・陸浦昴起・小倉俊臣・小林恭子・
宮山智樹・田中太・守田賢司(日本工営都市空間株式会社)

 国営公園の管理運営におけるデジタル技術の活用可能性の検討を目的に実施し、ドローンを用いた植栽の健全度調査及び園内3拠点を対象とした携帯電話位置情報サービスを用いた高度化検討を実施した。ドローンを用いた植栽の健全度調査においては、複数の撮影コースと高度を組み合せてデータを収集し、解析で得た植生指標等と樹木医による健全度診断との相関性を検証した。